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なぜ、我が家のテーブルは丸いのか

2026 6/10
中今の考え方 家具・道具
2026年4月19日2026年6月10日
朝の光が差し込む、丸いテーブルの上の二つのコーヒーカップ

食卓を囲み、丸いテーブルの向こう側に座った人と、今日の話をする。

ただ、それだけのことが、この家を建ててからやけに好きな時間になった。

なぜだろう、と考えてみる。たぶん、テーブルが丸いからだ。

目次

テーブルの形を、まじめに考えたことがあるでしょうか

家を設計していたとき、間取りやキッチンの位置は何度も頭を悩ませたけれど、正直なところ「テーブルの形」について深く考えた経験は、それまでほとんどなかった。

市販の家具はたいてい四角い。四角いテーブルで育ち、四角いテーブルでごはんを食べて、四角いテーブルで仕事をしてきた。疑う理由もなかった。

けれど、ロースタイルのLDKを考えていく過程で、杉の床に座ったときの目線の高さや、朝の光の入り方、人と人との距離の取り方を一つずつ確かめているうちに、ふと思った。

このLDKの中心に置くものが、四角である必要は、どこにもないのではないか。

上座がない、ということ

丸いテーブルには、上座と下座がない。

これは、住んでみるまでは頭で理解していただけで、本当に実感したのはあとからだった。

四角いテーブルには、どうしても「窓を背にする席」「廊下側の席」といった序列が生まれる。家族であっても、自然と「お父さんはここ」「お客さんはこちら」という位置関係ができる。

丸いテーブルには、それがない。どこに座っても、誰と向かい合うかが変わるだけで、席そのものに「格」がない。これは、思っていたより自由なことだった。

視線が、ちょうどいい角度で交わる

もうひとつ、丸いテーブルで気づいたのは、視線の交わり方だ。

四角いテーブルで対面に座ると、相手の目をまっすぐ見続けることになる。会話の熱を上げたいときにはいいけれど、日常のぼんやりした時間には、少し強すぎる。

丸いテーブルだと、同じ「向かい合う」でも、視線がほんの少し斜めに逃げる。相手の顔を見たければ見られるし、窓の外に目をやりたければそうできる。

この視線の余白は、会話のリズムをつくる。話したいことを話し、黙りたいときは黙る。そのどちらも許される空気が、自然と生まれる。

人が、輪になってくれる

予想していなかった変化は、人を招いたときに起きた。

四角いテーブルなら、人は一辺に並ぶ。丸いテーブルだと、人は弧に沿って座る。

これが不思議と、会話の形を変える。全員が全員の顔をゆるやかに見ている状態になる。端に座った人が話の輪から外れてしまうこともない。

近所の移住仲間とごはんを食べるときも、通りすがりに寄ってくれた方にお茶を出すときも、丸いテーブルがあると、人は自然と輪をつくる。「円卓」という言葉が、単なる形の話ではなかったのだと、毎回思う。

動線に、角ができない

実用的な話もひとつ。

丸いテーブルは、家の中の動線を邪魔しない。四角いテーブルの角は、必ずどこかで人の動きとぶつかる。子どものおでこにぶつかる心配もある。

丸いテーブルは、誰がどう動いても、ぶつからない。テーブルのまわりをぐるりと回れる。ちょっとしたことだけれど、日々の暮らしのなかで、この「角がない」ことの効き目は大きい。

古来、人は円の前に集まってきた

こうして丸いテーブルと暮らすうちに、思い出すようになった。

火を囲むときも、囲炉裏を囲むときも、人は円になる。
茶室の炉も、神事のしめ縄も、日本の暮らしの中心には、たびたび「丸」や「円」が現れる。

これは、偶然ではないのだと思う。人が集まる場所、気が巡る場所、静けさが生まれる場所には、角がない。先人たちはずっと前から、それを知っていた。

丸いテーブルを選ぶことは、古い知恵を暮らしに呼び戻すことでもあるのかもしれない。

テーブルの形が、暮らしを少し変える

「生活」から「暮らし」へ——このメディアが伝えたいことのひとつは、小さな形の選び直しが、日々を少しずつ変えていくということだ。

大きな決断をしなくていい。今使っているテーブルを明日買い替えなくても構わない。けれど、もし新しいテーブルを選ぶときがきたら、あるいは誰かに贈るときがきたら、「丸い」という選択肢を、ひとつ頭の片隅に置いてみてほしい。

丸いテーブルを囲んで、向こう側に座った誰かと、何でもない話をする。
そのたびに、ああ、暮らしているな、と思える時間が、静かに増えていく。

それが、私がこのメディアを始めた、ひとつのきっかけでもある。


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ワ空間つくラボ代表/「暮らしの中今」編集長。千葉県いすみ市で、自ら設計した家に家族と暮らしています。いすみでの実体験と、房総の家・素材・つくり手との出会いから、暮らしの改善と「中今」の考え方を綴っています。

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